目次
1.監理団体改善勧告の典型的なケース
(1) 技能実習生の保護・人権に関わる問題
技能実習生からの相談や苦情に対し適切な母国語での対応を行わない、実習実施者(企業)側の不正行為を認識しながら放置した、 実習実施者による賃金の不払い、長時間労働、暴力、ハラスメントなどの人権侵害行為を監査で発見できなかった、または、発見後も是正措置をとらせなかった場合。
(2) 監査・指導体制の不備
法律で義務付けられている3か月に1回以上の実習実施者への訪問監査を怠った、あるいは監査記録に虚偽や不備があった、技能実習日誌、監査報告書、相談記録などの法定帳簿の作成・保存を適切に行わなかった場合。
(3) 実習計画の適正性に関わる問題
実習実施者に対し、実習計画とは異なる単純労働や、本来の目的と異なる作業をさせている事実を是正させなかった、技能実習の目的や内容が、許可職種や実習生の能力に見合わない不適切な計画を策定・支援した場合。
(4) 届出・報告の義務違反
技能実習生の失踪や、重大な事故・病気など、入管法および技能実習法で定められた報告事項を怠ったり、遅延したりした場合。
2. 改善勧告の内容
(1)違反事実の特定
監理団体のどの行為が、入管法や技能実習法のどの条項に違反しているか、または不適正であるかを具体的に指摘します。
(2)改善措置の具体的内容
問題となっている点(例:監査回数の増加、相談窓口の機能強化、役職員の研修実施など)について、具体的かつ期限を定めた是正措置を求めます。
(3)改善報告書の提出要求
勧告された期限内に、指定された措置を講じ、その結果を詳細に記載した改善報告書の提出を求めます。
3.勧告に従わない場合の措置
(1)改善命令
改善勧告を受けたにもかかわらず、正当な理由なく勧告された措置をとらなかった場合、主務大臣はさらに重い「改善命令」を発します。命令には、具体的な措置内容と、命令に従うべき期限が改めて示されます。
(2)許可の取消し
改善命令にも従わなかった場合や、命令に従ってもなお適正な監理が期待できないと判断された場合、最終的に監理団体の許可が取り消しとなります。許可が取り消されると、その団体は監理団体としての活動を一切行えなくなり、傘下の実習実施者や実習生にも甚大な影響が及びます。
(3)刑事罰
改善命令に違反した場合、懲役または罰金の刑事罰が科される可能性もあります。
4.改善勧告を未然に防ぐための予防策
(1)法定監査の質の向上と厳格化
3か月に1回の監査を単なる書類チェックで終わらせず、実習生や日本人指導員からのヒアリングを充実させ、抜き打ち監査や深夜・早朝監査などを組み込み、実態を深く把握する。監査担当者に対し、労働基準法、安全衛生法、人権侵害に関する最新の知識を継続的に教育し、不正を見抜く能力を高める。
(2) 実習生相談体制の強化
実習実施者の影響を受けない独立した相談窓口を設置し、実習生が母国語で安心して相談できる環境を整える。相談内容が法令違反や人権侵害に関わるものであった場合、直ちに事実関係を調査し、実習実施者に対して強力かつ迅速な是正措置をとらせる体制を確立する。
(3) 実習実施者への指導・教育の徹底
実習生を受け入れる実習実施者に対し、入管法・労働法上の義務、人権に関する研修を義務化し、法令遵守意識を徹底させる。法律改正や行政指導の事例などを定期的に提供し、実習実施者のコンプライアンス意識を常に最新の状態に保つ。
5.改善勧告を受けた場合の適切な対応
(1)事実関係の徹底的な検証
勧告書の内容を厳粛に受け止め、指摘された違反事実や管理体制の不備について、直ちに内部調査を行い、原因を明確にします。
(2)是正計画の策定と実行
勧告で求められた措置内容に基づき、具体的な改善計画(アクションプラン)を策定します。計画には、担当者、実施方法、そして何よりも明確な期限を定めます。
(3)改善報告書の提出
期限内に改善措置を実行した後、その結果と、今後の再発防止策を詳細かつ具体的に記載した改善報告書を作成し、遅滞なく外国人技能実習機構に提出します。
(4)組織風土の改革
一時的な是正に留まらず、組織全体としてコンプライアンス体制とガバナンスを強化し、役職員の意識改革を促す研修などを実施します。
改善勧告を受けたら専門家にご相談ください
改善勧告に対する対応は、対応方法を誤ると、今後外国人の雇用継続ができなくなる場合も十分にあり得ます。しかし、改善勧告に対する適切な対応を熟知している専門家は少ないというのが実情です。
南淵聡法律事務所では、入管法に精通した弁護士が相談に乗りますので、最適な改善策をご提案することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。